
こんにちは!ドイツのBabywearingを学んだ抱っこ紐の専門家、かつ抱っこ紐大好きすぎて75社250種類以上の抱っこ紐を試着研究してきたハグミノです。
今日は、ヒップシートのように使える「簡易スリング」について、専門家目線で考察します。
抱っこ紐をアドバイスする立場の方の参考になれば幸いです!
近年人気の簡易スリング
今朝、インスタグラムで新しい抱っこ紐発売の情報が流れてきました。
日本の抱っこ紐の老舗メーカーラッキー工業さんからの「ポルバンモア」。
肩掛けカバンと簡易スリングが一体化したような抱っこ紐。
ここ数年、グスケットをはじめとした簡易スリングが注目されるようになり、「コンパクトになってサッと使える」ということもあってかあっという間に広がっていきました。
こちらの「ポルバンモア」、Instagramのキャプションを見ていくと「腰がすわった乳児期(7ヶ月頃)〜」という仕様になっています。
赤ちゃんのお尻や腰付近を支える構造の簡易スリングタイプは、この「腰がすわった頃」というのがとても大切なポイントです。
「お座り」と「腰座り」は違う
なぜ、「腰がすわった頃」というのがポイントなのか。
簡易スリングは、赤ちゃんのお尻や腰付近のみを支え、背中や肩周りは大人が軽く支える構造になっています。
背当てがしっかりあって、赤ちゃんの背中や首元まで支えられる構造とは違います。
新生児の赤ちゃんは首が座っていないので、首や背中までしっかり支えてあげなくちゃ、という印象があると思いますが、首が座った後の赤ちゃんはどうでしょうか?
首が座れば安心、というわけではありません。背中や腰付近はまだ自分の力で自分の姿勢を保ちきれません。
なので、抱っこ紐の背当て部分をしっかりフィットさせて支える必要があります。
首が座った後にも、立ち歩くまでには様々な発達段階があり、支えるべきポイントが変化していくのです。

赤ちゃんのお尻や腰付近のみを支える構造の「簡易スリング」は、赤ちゃん自身が自分の力で座ることができ、簡易的なサポートのみで安全な姿勢を自分で保てる発達段階になっている、というのが適正時期。
(適正時期であっても使用児には大人が背中を支えるのが必須。両手が自由になる抱っこ紐ではありません。)
この「腰座り」は、「お座り」と混同されがちなのですが、わかりやすくお伝えすると、
お座り→大人が座る姿勢を取らせてあげて、ちょっとあぶなっかしくゆらゆらしながらなんとか座る姿勢をキープできている状態
腰座り→ゴロンと寝転んだ状態から片尻座りの状態になり、ハイハイでの移動、そしてまた片尻座り、から自分で座る、という一連の動きが赤ちゃん自身ができる状態
です。
この違い、私は抱っこ紐の専門家として赤ちゃんの身体について詳しく学ぶまで知りませんでした。
おんぶの開始時期や、簡易スリングの使用時期で、お座りと腰座りが混同していることはよくあります。
また、説明書では「腰がすわった7ヶ月頃」という設定していたとしても、商品紹介のモデルの赤ちゃんが小さな(発達段階が腰座りとは思えない)ケースを見かけることも多くあります。
その場合は、大人が素手でだっこをしている状態を、簡易スリングが補助しているような状態での使用になります。
養育者の実用写真でも、首すわり後すぐのおんぶや腰座り前の簡易スリング使用などの写真を見かけることが多く、視覚的にその情報が広がっていくので、注意が必要だと私は感じています。
なぜその時期なのか、の意味が届いていないのが現状
抱っこ紐の使用には、抱っこ紐ごとにさまざまな設定があります。
この道具は、おんぶは腰座りから、こっちは首すわりから。こっちは立ち歩ける1歳から。
この抱っこ紐は新生児を縦抱きにしていい、こっちは首が座るまではインサートが必要、などです。
根拠あるBabywearing理論をもとに開発し、仕様が設定されているものもあれば、根拠なく危険な設定がされているものもあります。
私も自分の育児のための抱っこ紐選びの時には、Babywearingを知らなかったので、説明書を見て新生児から縦抱っこができるタイプを選びました。
が、なぜ「縦抱っこができるのか」まで考えたことはありませんでした。
「首座り前の赤ちゃんの支えるべき場所、腰座り前の赤ちゃんの支えるべき場所、発達によって安全なポイントがあり、そのポイントが叶うように抱っこ紐を調整して使う」
このシンプルな情報がパパママたちに届く機会がないので、たとえ説明書で「新生児縦抱っこOK」になっていたとしても、安全に使えていないというケースが多いのです。
抱っこ紐を選ぶ前に、赤ちゃんを支えるポイントの発達による違いを伝えていきたい
簡易スリングをテーマに、赤ちゃんの発達段階と抱っこ紐の使用時期について少し書いてみました。
抱っこ紐の相談には、赤ちゃんの身体のことだけでなく、抱っこ紐という道具に対する専門知識が不可欠です。
抱っこ紐を選ぶより前に、赤ちゃんの身体の特徴を知り、抱っこ紐使用時にどんなことを気をつけ、どこを支えてあげることが大切か、養育者の方に伝えていきたいです。
そのためには、赤ちゃんの発達と抱っこ紐について専門知識を学び現場で伝えていく支援者の方がもっともっと必要で、ドイツのbabywearingを1人でも多くの方に知ってもらいたいと思います。
詳しく学んでみたい!と思った方は、ぜひだっこの学校にご参加ください。