⑪ひとつの答えにたどりつく/不登校から教育移住までの道のり

教育移住記録

長男の不登校から市民立小中一貫校を選択するまでの記録です。その途中で、シングルマザーになったり、自分でスクールを運営した期間もありました。教育移住、離婚、そして子どもたちの学校問題がひと段落するまでの4年の記録を書いていきます。

長男小2の1月に学校拒否がはじまって半年。やっと行き着いたと思っていた適応指導教室も、息子にとってはしんどい場所だということがわかりました。

これ以上どこに、、と行き先をなくした頃、ふと大学の友人と話したことをきっかけに、「これだ!!!!」というひとつの教育の形を知ることになります。

市民がつくる新しい形の学校

教員をしている大学の友人が、おもしろい人いるよ、と紹介してくれたのが、市民が無償でつくるあたらしい学校「ツクルスクール」(現在は 市民立小中高一貫校 瀬戸ツクルスクール)をつくったご本人、一尾茂疋さんでした。

最初は「へーそんなのあるんだ」くらいで。当時私は関東、スクールは東海。私にとっては「遠い場所」の話だったし、フリースクールのような場所なのかな?と、思ったりしていました。でもとにかく話は聞いてみたい。

コロナ禍なこともあり、ちょうどスクール説明会がオンラインであったので、申し込むことにしました。ここからがもう、驚きの連続。

我が家のように、行き場を失った子どもたちが過ごせるような居場所やフリースクール的な場所なのかと思っていたら、もう全然違う。

オンラインの画面越しにもビシビシと伝わってくる一尾さんの熱に、私は一瞬で引き込まれていきました。

そこで初めて知ったことは、

日本の教育の現状を俯瞰してみた視点の話や「学校」という大きな絶対的なもの、

学校に行けることを「正」とした上での適応指導教室やフリースクール、居場所というものがあること。

それとは別の選択肢として、オルタナティブスクールやインターナショナルスクールがあること。

それでも、教育のゴールを見てみると、どの選択肢も最終的には進学や就職をゴールとしているので、実質教育の道筋は大きく一つだということ。

ツクルスクールは教育のゴールを個人事業主として見据え、必要な力を小中学生時代に育んでいること

(教育のゴールのことなんて、この時まで考えてもみなかったし、個人事業主って…!?)

それから、インターナショナルスクールは、国が認可した一条校ではないことが多く、その場合には地域の学校に籍は置いて、実際にはインターナショナルスクールに通うという形が認められていること。

教育機会確保法により、一条校に籍を置きながらフリースクルなどへの通学が認められるようになっていること。オルタナティブスクールにも、同じように通学できること。

そしてなによりも心に刺さったのが、「教育を保護者が積極的に選択していい」ということ。

私立小学校やインターナショナルスクールを選ぶように、ホームスクールやオルタナティブスクールも教育の選択肢なのだということ。

ずっと私の心に引っかかっていたトゲがとれて、一気に何かが流れ出すようでした。

「積極的に選択する」という視点

私はこの説明会に参加するまで、小学校は、地域の学校以外には私立という選択肢しかないと思っていました。私立は金銭的に難しいという理由から、私の中では実質選択肢として存在していないのと同じ。

そして、その地域の小学校に「通えない」から、適応指導教室やフリースクールに「行くしかない」というイメージ感。

息子の不登校体験を通してひしひしと感じ始めていた日本の教育の現状。もやもやしながらも、自分自身の中でも「本当は学校に通わせたいけど」とか「学校に通えることがなによりもいいんだけど」という前提をなくしきれないことへの苛立ち。

これまで感じてきたものを全て吹き飛ばすような、圧倒的かつ説得力しかない「もうひとつの選択肢」をつくり行動している人がいる。そんな学校が日本にある。

驚きと、救われた気持ちと。本当に衝撃的な出会いでした。

正直なところ、適応指導教室も難しいと感じ始めた頃には、学校に通えるかどうかの話ではなくて、私は息子に何が別の教育を受けさせたい、と感じるようになっていました。

でもそれは私立の選択以外許されないことなのだと思っていたのです。

そんな時に、「積極的に選択する」ということが実は認められていることを知り、同じ日本の中で実際にそういう場があって、積極的に選択している人たちがいることを知ったことに、目の前が急激に晴れるようでした。

無償のスクールって、どういうこと・・・?

さらにそこのスクールは、無償で運営されているといいます。え、どういうこと・・・?

聞けば、一尾さんは他の仕事(塾の運営)で生計をたて、スクールの運営では一切人件費はうけとらないのだそう。

公立学校でも授業料を家庭から支払うことはない。給食費や教材費、遠足費など実費は支払いがあるのと同じように、ツクルスクールでも施設代や昼食代、その他活動に使った実費は家庭が払う。

なぜこのシステムなのかというと、理由は多々あるけれど、大きく二つ。

ひとつは、既存の公立小学校と並ぶ選択肢になること。

私立やインターナショナルスクールのような別の選択肢は今も存在しているけど、そこには経済格差が必ずついてまわる。これでは誰もが選択できる場にならない。だから公立小学校に通うのと同等の金額で通える場所であるということ。

もうひとつは、人件費という対価をもらわない、支払わないことで、「運営したいからやる」「通わせたいから選ぶ」「通いたいから通う」という、スタッフ、保護者、子どもたち全員に当事者意識がうまれ、対等な関係でいられることになるから

ということでした。

保護者は1円でも支払えば、消費者の感覚になり、うちの子をお願いします、ちゃんとみてくださいね、とうい感覚になる。そして運営側は、お金をもらっているのだからと、必要以上の責任が発生したり、生徒集めをし続ける必要もうまれ、教育内容とか子どもたちと向き合うことよりもそちらに時間を割かれていくことになる。そして生徒が集まらなかったら閉校するしかなくなる。

こういうことをうまないための無償。

想像の斜め上をいく話ばかり展開される中で、もう「すごい」としか言いようのない気持ちで話を聞き続けていました。

つくればいいじゃん

すごい人に出会った。すごい場所があることを知った。日本でこんなところ、他にない。自分の地域にもあればいいのに、ない。いいなあ。

するとなんということか。一尾さんは「自分でやればいいじゃん。やり方教えるし。誰でもできるよ」と言ったのです。

いやいやいや、と思いながらも、「そ、そんなワクワクすることある?!」と、その気になってしまうのが私。笑

もう、用意されている場所は行き尽くした。これ以上探し続けるより、自分でつくったほうがどれほどいいか。自分だけじゃ無理だけど、ツクルスクールをモデルケースとさせてもらえる。これはやらない以外に選択肢はありませんでした。

⑫につづく。

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